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MOVIE 2018.8.20
異人たちとの夏
日本映画(1988年)
監督:大林宣彦
出演:風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子
古き良き時代を描くノスタルジックな怪談映画
みなさん、どんなお盆を過ごしましたか?日本の夏行事として欠かせないお盆。亡くなった人や祖先を振り返り、感謝する大切な行事です。そんなお盆にぴったりの映画「異人たちとの夏」を紹介したいと思います。「ふぞろいの林檎たち」シリーズの脚本家・山田太一原作、「傷だらけの天使」の市川森一脚本で「尾道三部作」などのファンタジーを得意とする大林宣彦が監督した作品です。舞台は古き良き昭和時代が残る「浅草」。主人公のシナリオライター・原田英雄は、妻子と別れ高級マンションで一人暮らしをしている自由人。ある日、少年時代に過ごした浅草に迷い込み、12歳の頃に死に別れた両親に再会。懐かしさから会いに行く日々が始まる…という物語です。「浅草」という町を舞台に、30年前の時代を生きていた「両親」の姿を通し、おおらかで古き良き時代をノスタルジックに描いています。両親と対比されるのは、家族や友人、隣人との関係性が希薄になった時代を生きる英雄。しかし、両親との交流を通し、周囲の人に対しての思いやり、温かい気持ちを取り戻していきます。後半の両親との別れのシーンは涙なしに見ることができません。別れの席に選んだのは、家族の思い出のすき焼き専門店。夕暮れ迫る中、最後まで息子を案じながら姿が薄くなっていく両親と、心から感謝の言葉を伝える英雄。一口も手をつけられなかったすき焼きだけがグツグツと煮えている描写が涙を誘います。ただこの作品…ここで終わりではありません。この後の展開は賛否両論。ある意味大林監督らしい展開であるとも言えますが、個人的にはもっと別な表現で見せて欲しかったという気持ちです…。そこは、見た人それぞれが感じて欲しいと思いますので、多くは語りません。過去に決別した英雄は、生きる目的を取り戻したかのような晴れ晴れした表情を見せ、それと同じく、見る者にも前向きに生きる勇気をくれるような作品だと思います。ぜひこの夏に見てみて欲しい作品です。